エドワーズ症候群 - 産まれる前の初めての健康診断

遺伝子疾患に関する記事

エドワーズ症候群

エドワーズ症候群(18トリソミー)とは

「エドワーズ症候群」は18番目の染色体が1本余分に存在することから生じる先天性疾患で、医学的には「18トリソミー」と呼ばれます。

通常、人間の細胞には父親由来・母親由来あわせて46本の染色体が存在しますが、エドワーズ症候群の場合、18番染色体が3本存在することで様々な症状があらわれます。

発生率は約6,0008,000人に1人ほどとされ、21トリソミー(ダウン症)よりも稀ですが、決して「自分には関係ない」と言い切れない確率です。

なぜ18トリソミーが起こるの?

受精から胎児への発達過程で、卵子や精子由来の染色体分配に偶発的なエラーが起こることで、余分な18番染色体が生成されてしまいます。

この原因は特定のライフスタイルや環境で左右されるわけではなく、年齢や妊娠回数に関係なく、誰にでも起こり得ることが特徴です。

ただし、35歳以上の「高齢妊娠」において、その発生リスクがやや上昇する傾向があると報告されています。

エドワーズ症候群の特徴

エドワーズ症候群のお子さんは、出生時から低体重であることが多く、頭や顎が小さい、手指の特徴的な重なり、足の裏が丸みを帯びるなど、特有の身体的サインがみられることがあります。また、心臓や腎臓などの内臓に重篤な異常を伴うケースも多く、生命予後に大きく影響することがあります。知的発達への影響も深刻で、重度の遅れが生じやすいとされています。

残念ながら、エドワーズ症候群のお子さんは重い合併症を抱えることが多く、生存率は決して高くありません。

生後1年を迎える前にお子さんが亡くなってしまうケースが多いと報告されています。

ただし、これはあくまで統計上の数値であり、症状の重さや合併症の有無は個人差があります。医療の進歩により、少しずつサポート体制は整いつつあり、それぞれのご家族が可能な限り良い環境でお子さんを迎えられるよう、様々な取り組みがなされています。

エドワーズ症候群(18トリソミー)の分類

実はエドワーズ症候群にも、いくつかの遺伝子パターンがあります。エドワーズ症候群の場合も、下記の3タイプが知られ、ダウン症(21トリソミー)の場合と同様におおよそ以下の割合が指摘されています。

  • トリソミー型(標準型):約94
    全ての細胞で18番染色体が3本存在するタイプです。最も一般的で、重度の症状が出やすい傾向があります。
  • 転座型:約5
    18
    番染色体が別の染色体に付着して(転座)いるタイプです。結果として18番染色体由来の遺伝情報が3セット存在する点は同じですが、遺伝的背景に家族性が認められる場合もあります。
  • モザイク型:約1
    一部の細胞は正常な46本の染色体を持ち、一部は18トリソミーを持つ混在状態です。モザイク型の場合、症状が若干軽くなったり、生命予後に多少の改善が見られる可能性がありますが、あくまで傾向であり、個別のケースによって違いがあります。

NIPT(新型出生前診断)でできること

妊娠中のママにとって、エドワーズ症候群のリスクを早期に知ることができれば、今後の選択や準備を計画的に行いやすくなります。近年注目を集めているNIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの血液を用いて胎児由来のDNA断片を分析し、トリソミー型染色体異常(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーなど)のリスクを高精度で把握するスクリーニング検査です。

このNIPTは、母体血からの採血だけで行えるため、胎児に直接触れることなくリスクを調べることができます。そのため、流産リスクのある羊水検査や絨毛検査をいきなり行う必要がなく、特に初産で不安が大きい2030代の妊婦さんにも安心して受けられます。もしNIPT18トリソミーのリスクが高いと判定された場合には、確定診断を行うために羊水検査など、より正確な検査へ進むことが可能です。

選択のプロセスを大切に

妊娠中に18トリソミーなどの可能性を知ったとき、「この先どうしたらいいのだろう?」と不安が募るのは当然です。

妊娠継続の是非、出産後のサポート体制、また生後もし重度の障害を抱えるお子さんをどのように支え、育てていくかなど、考えるべきことは多岐にわたります。

エドワーズ症候群は重度の症状が多く、残念ながら長期的な生命維持が難しいケースも少なくありません。

そのため、妊娠中にあらかじめ情報を得て、パートナーやご家族としっかり話し合い、自分たちの価値観や人生設計に照らし合わせて、「もしもの場合」に備えることが大切です。

また、近年は医療・福祉・保健の専門家だけでなく、同じ経験を持つご家族たちのコミュニティがオンラインやSNSで形成されています。

情報共有や気持ちを分かち合うことで、孤独感や不安が軽減されることもあります。必要であれば、カウンセリングや医療ソーシャルワーカーのサポートを受けるのも一つの手段です。


エドワーズ症候群(18トリソミー)は、赤ちゃんやご家族にとって大きな試練となり得ます。しかし、事前にNIPTによるリスク評価を行い、十分な情報とサポートを得ることで、今後の道筋を冷静に検討することが可能です。

あなたが納得できる選択肢を見つけるために、医師やカウンセラーとじっくり話し合い、必要なサポートを受けながら進んでいきましょう。